わがしとやかなシングルパラダイス
『シングルマン』トム・フォード初監督。さすがに抑制の効いた演出でゲイのおっさんの狂おしい愛を抑えめのユーモアと共にしっとり描いている。/『洲崎パラダイス 赤信号』どうしようもない腐れ縁が横たわるどん底の状況の中で飄々と生きる潔さが心地よい。新珠三千代は『風船』の時とは反対に欲望に忠実に生きる女の姿を演じる。これもいい。/『わが町』これぞオダサク印といった大阪下町人情劇。逢坂天王寺の名物男、ペンゲットのターやんこと佐田島他吉の生涯である。情が深すぎてコントロール不能なおっさんは映画でみるとなんとも味わい深くドラマティックなんだけど、側にいると困る。この頃のプラネタリウムの星はほんとにイミテーションでいいな。/『しとやかな獣』新藤兼人大先生がウッディ・アレン並の(は失礼か)洒脱な機関銃トークで彩る傑作ブラックコメディ。二度目になるがとにかく見所が満載で何度見ても発見がある。思わずシナリオを読み返してみた。「物事をむきだしにしてはいけません」という母の科白の通り、父と母のいうことにはいちいち含みがあるわけだが、時折感情を垣間見せる父と違い、母はいっさい己の内面を見せようとしない。悲劇の後、ソファーで呑気に眠りこけてしまった夫を見返す表情だけが母の内面が垣間見える諦観の瞬間である。